ガラスの水垢(ウロコ)と中国レアアース問題の不思議な関係

クルマのボディーにつく水垢とガラスにつく水垢は、似て非なるもの。ある程度までは洗剤で除去できるボディーの水垢に対して、洗剤では除去できないのが窓ガラスの水垢です。これの発生する理由と除去方法を今回は解説します。

ウロコ状の水垢がガラスに付着…

ウロコが発生・付着するのはガラス面です

車のガラスに付着する、丸い輪のような水垢。通称、ウロコと呼ばれるガラス特有の汚れです。例えば後ドアの窓などプライバシーガラス(黒っぽく着色されたガラス)などでは、見た目が悪くなりますね。また、フロントガラスでは、視界に影響が出てしまいます。(後述)

ちなみにこの除去には、中国のレアアース問題も関係しています。レアアース問題に関しては、下部に「雑学」として記載していますので興味のあるかたは読んでみてください。


ガラスに付着しているウロコ

右写真が、そのウロコ状の水垢を写真に写したものです。多かれ少なかれあなたの車にも付着していると思います。

これは、雨や水道水などのガラスに付着した水分が蒸発した際にガラスに残った不純物です。特にガラスにはガラスに付着しやすい成分が残りますので、かなり厄介な存在です。また、雨の度に繰り返されることで、どんどん厚みが出てきて、除去が困難になっていきます。

見た目も悪いですが、それ以上にフロントガラスでは運転の邪魔にもなります。

油膜とウロコ状の水垢のコンビが最悪

フロントガラスでは、このウロコ状の水垢だけで視界が悪くなることはまれです。ただ、このうえに油膜が付着することで、対向車のヘッドライトなどがウロコに沿って乱反射して、視界が極端に悪くなってしまいます。

  • 雨中での走行
  • 暗くなってからの走行

この2つの状況では、特に対向車のヘッドライトの光が乱反射することで視界の大半が奪われて、運転が危険になってしまうので、ガラスの水垢はしっかり除去しておきましょう。

ガラスの水垢は洗剤では取れないの?

残念ながら、ガラスに付着するウロコ状の水垢は通常の塗装面の水垢と異なり、ガラスと強固に結びついてしまっています。洗剤で洗えば落ちるようなレベルではありません。

では、どうすれば良いのか?
結論からいうと専用の除去方法が必要です。

油膜だけであれば、市販の油膜除去剤でもかなり除去できますが、ウロコ状の水垢は、ガラスの上に凸状に付着している固体ですので、削り落とす必要があります。削り落とすといっても、ガラスに傷をつけては意味がありません。ガラスに傷がつかない、それでいて付着した頑固なウロコ状の、水垢を削る研磨剤が必要になってきます。

ガラスのウロコ除去のビフォーアフター

※ガラスのウロコの除去には溶かす方法と削る方法があります

ガラスが綺麗だと愛車はより輝く

クリアな窓ガラスは、年式の古い車でもイメージがかなり良くなりますね。

洗剤では落ちないガラスの水垢。油膜だけでも落とさないと危険です。

ガラスの「水垢」と「油膜」は、違います。

油膜とは、読んで字のごとく油です。例えば、天井にかけたワックスが雨で流れ出てきて、フロントガラスなどに付着したり、道路の走行中に付着した油です。これが危険な存在で、対向車のヘッドライトや街灯の光を乱反射させます。安全運転をするためにも絶対に除去が必要です。

一方、ウロコ状の水垢は、フロントガラスに多数付着しない限りはそれほど視界をさえぎることはありません。ただ、このウロコ状の水垢の上に油膜が乗ってしまった場合が、最悪なのです。(そして、殆どの場合ウロコ状の水垢は油膜とセットになっています)

特にワックスの油が流れてできた油膜は強固でやっかいな存在でもありますので、油膜だけでも除去して、運転に必要な視野を確保してください。

※ワックスを使わない新しい洗車の知識、撥油系コーティングに関してはこちらで解説したので参考になさって下さい。

今回解説したように、愛車のガラスにとって、ウロコ状の水垢は、見た目が悪いだけでなく、運転上も危険をともないます。早めに除去が基本です。フロントガラスは安全な運転のために視界の確保のために。サイドのガラスやリアガラスは愛車の見た目向上のためになりますよ。

【雑学】 中国のレアアース問題で・・・

ちょっとした雑学(^^)

ウロコ状の水垢除去では、酸性の溶液で溶かして処理する方法と、研磨剤で削って除去する方法の2種類が代表的な処理方法です。
そのうち削って落とす方法で一番普及していた研磨剤が酸化セリウムでした。この酸化セリウムがレアアースで殆どを中国から輸入していたのです。そこに去年(2010年)、中国からのレアアース輸出制限などのごたごたがあり、レアースには関係ないと思われていた洗車業界でも在庫薄の状況が発生しました。(ちなみにこの時、中国から提示された卸価格はそれまでの10倍近くで、割り当て量も極端に減っていました。)

私も10倍の原価高騰ではさすがにどうにもできず、ちょうど研究中だったほかの素材での研究を最優先にして製品をリニューアルしたという経験があります。現在もこの問題は洗車業界全体としては改善されておらず、現在保有する在庫限りで、今後は酸化セリウムを使っていた製品は廃盤になるか、リニューアルが行われていくと思われます。

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